-第三回- June 1, 2001

経済ってなかなかわかりづらい。とはいえ、Zephyr発行人としては、少しは世の中のことを理解しておきたい・・・ そこで、経験豊富、知識無尽蔵のさだやんを講師にお招きし、日頃から気になっていた疑問について、お答えいただきます。 -第一回-、-第二回-、-第四回-、-第五回- -第六回-、-第七回-

今日はその第三回目、携帯電話にまつわるお話を伺いました。

Q:携帯電話は便利ですが、日本で使っているものをそのまま海外に持っていっても使えません。早く世界標準ができることを期待したいのですが、実際はどうなるのでしょう?
A: これは、信じられぬ程アホらしく且つ複雑な話ですので、ま、ゆっくりと下記を御一読ください。

現在の欧州の携帯はGSMというプロトコール (ま、基礎言語みたいなものですね)を使用しており、伝達情報量は 9.6Kbpsに限られます。
よく、GSMの技術が日本のと違うから使えない、といいますが、GSMが日本で使えないのは全く技術的な問題と無関係。 要するに、日本の業者が、GSMプロトコールを提供しないから 使えないだけのことです (時間がかかるわりに引き合わない。。。)

周波数の問題、と勘違いしている人もいますがこれも間違い。確かに日本の現在のNTTDoCoMo は 1,900cycle KDD/PDC 及びPHSは 800、他方、こちらのGSMは 当初は900、最近は1,800とのデユアルが出ていますが、周波数だけ合わせても電話は通じません。つまり、日本のオペレーターは GSMのプロトコールがないので、メッセージの’認知’が出来ないということです。

では、次世代はどうかというと、所謂WCDMA(Wider band code dived multiple access)は先般スイスでもスキャンダルになりかけた曰く付きのシステム(入札寸前に業者が合併するという いはば談合現象がおきた) ですが、これには 日本・欧州タイプと 米国のQUARCOM社特許によるCDMA2000の二種類があって、お互い全く互換性なし。

さてでは、すくなくとも日本と欧州は?と思うでしょうが、現在双方とも メンツの問題もあって終始version up に勤めており、NTTDoCoMo が今月発表するタイプと 年末に欧州が発表するタイプは、JAPAN TELECOMのシステムとはマッチするが、NTTDoCoMo とはこれまた互換性ない。。。。ということ。じゃ、KDDは? というと、今ききましたら、合併したDDIがずっと米国のシステムを採用してきたから、コスト面でこれを変更できない、従って、これも互換性ない。。。という訳。

ま、絶望的ということでもありません。 既に開発責任者は 第四世代のシステムを研究しており、今度こそは世界が共通となる、ということになっているようですがさて、その実現は。。。? 小生まだ生きているでしょうか。。。
Q: えっ、それじゃ何十年も先の話ということですか!

このGSMっていうのはなんの略ですか。

それと、伝達情報量は 9.6Kbps というのはどのくらいの量なのですか。これで不足するということはあるのですか。
A: GSMというのは、GLOBAL SYSTEM FOR MOBILE (欧州統一規格で、携帯ができると同時に70年代に制定されました。

この程度の伝達情報量では、電話だけならよいですが、i-modeのように画像・音などが入ると、遅くて全く使い物になりません。
Q:周波数のお話がでたついでに、日本の電話機の周波数がオランダの警察が使用している周波数とバッティングするため、日本から電話機を持参している人が警察から注意を受けたそうです。こういうことがわかっているなら、日本の電話機も周波数を少しずらしては? (もっとも、使用説明書には、国内使用に限ると書かれていますよね。了見が狭いなと思っていたら、こういう問題があるからなのでしょうか。)
A: 先般申しましたように、これは技術的な問題でなく、メンツが絡んだ政治的問題。
 国が、自らの理由で決めた周波数を他国に文句いわれる筋合いはない、ということなんですな。
 それと、単に周波数だけならよいが、プロトコール(使用基準・バイブル)が伴うので、一々人にいわれて周波数を変えていては商売になりません。
Q:なるほど。厄介なものですね。

ところで、9月からオランダでもi-mode携帯電話が登場すると聞きました。これって、日本のi-modeのオランダ語バージョンということでしょうか。
オランダ以外のヨーロッパ諸国でも同じように発売されるのでしょうか。だからといって、この電話機を日本に持っていって使えるわけではないということですね。
A:i-mode というのはNTTDoCoMoの開発したプロトコールで、同社の登録商品です。
オランダのは これに基ずいた欧州対応版を オランダの大手携帯電話プロバイダーKPNが NTTDoCoMoとの合弁で 欧州に出すもの。只、既に申しましたように現在のGSMでは用をなさず、WCDMAシステムが普及しないと使えません。

これは KPNの指定携帯端末を持っておれば、欧州何処でもつかえるようになるはずです (但し、各国が対応プロトコールを持ってればの話)
i-modeの欧州進出、大いに期待したいものです。
先生、今日も詳しい解説をありがとうございました。