by 恭子(東京在住主婦) & 京子(オランダ在住主婦)
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最新ゴミ処理事情 オランダ/日本

恭子:クリスマス、そしてお歳暮のシーズンがやってきました。デパートなどでは不景気と言っても贈答用の美しい包装は健在です。パッケージはそのまま捨てられてごみになるわけです。今回はこのゴミ問題について考えてみましょう。
ゴミの中でも、まだ使えるゴミは使いまわすとか、リサイクルショップを通じて新たな持ち主を見つける、あるいは原料として再生の道を見つける、などいろいろな工夫があるでしょう。また、最初からゴミを出さない工夫というのも大事だと思います。オランダではどんな工夫がなされていますか。京子さんの住む地域のごみ収集の方法を教えてください。

京子:地区によってちがいますが、この辺りは自治体から各戸に大きなゴミ用コンテナが配られます。縦長、蓋付きで重たいですが車輪がついていて週一回の収集日には決められた場所までごろごろと牽いて持っていきます。
中が仕切で二つに別れていて、一つは生ごみでコンポスト用、もう一方はそれ以外のゴミ全て。ガラス瓶や紙類は、街のあちこちに設置された収集ポストに持っていきますが、ゴミとして出してる人も結構います。
アパートの住人向けには、アパートごとに巨大なコンテナが用意され、住人はそこまでゴミを持っていって捨てます。

週一回のゴミ収集は、内部が二つのコンパートメントに分かれたゴミ収集車がまわってきます。作業員がフォークリフトのパレットみたいな台にコンテナを乗せるとその台が持ち上げられ、逆さにして中身を収集車の中にふるい落とします。仕訳したゴミがきちんと別々のコンパートメントに入るように収集車にも仕切があります。

恭子:それはユニークですね。

京子:その際、作業員がゴミ箱の中を確かめて、きちんと仕訳されていない場合は中身全部がその他のゴミの方にはいるように収集車の仕切を動かします。
これと同じ様なコンテナはアメリカでも見かけました。日本にもありますか。

恭子:見た事ないです。

京子:このコンテナに入りきらないゴミは自分でゴミ処理場に持って行きます。最近リニューアルオープンしたこのゴミ処理場、オープニングはワインやオードブルが出て華々しかったです。普段は作業衣で働いているおじさま達が蝶ネクタイ姿で即席バンドマンに早変わり、陽気な音楽を奏でる脇では道化師の格好をしたお兄さんが子ども達にゲーム感覚でゴミの仕訳について教えていました。ゴミに埋もれたように細工したプリクラ風記念撮影も無料でやっていましたよ。私達も記念に一枚撮ってもらいました。どうぞいらっしゃいという歓迎のパーティを開き、それによってこの処理場の宣伝をして、結果的に分別収集に協力してもらうわけですね。人員を使って分別収集しないで、逆に市民に持ってこさせる。これってすごいですよね。
こんなウェルカムな雰囲気なので、夫は土曜日になると捨てるものを探してゴミ処理場に足を運びます。(おかしいでしょう?)

恭子:どうしてですか?毎週土曜日に処理場でパーティがあるのですか?

京子:いえいえ、別にパーティのワインにつられたわけではないんです(笑)。近代的な設備で、ゴミの材質ごとに放り込み口がいくつもあって、単にゴミを捨てているというより環境保全に協力しているという気持ちになれるからでしょうか。

恭子:新聞紙やペットボトルなどはどのように扱われていますか。

京子:町のあちこちに回収ボックスがありますが、そこで集めるのは紙類とガラス瓶、それに古着とバッテリーだけですね。ペットボトルは、一個1ギルダー(約50円)をデポジットとして払うタイプの再利用型ペットボトルと一般ゴミに捨てるボトルの2種類あります。アルミ缶もスチール缶もゴミ処理場に持っていかない限り分別収集していません。分別収集して再生する際にかかるコストや環境汚染の程度などを総合的に判断した結果だと思いますが、結局、一人一人に分別しろと言ってもまずきちんとできないだろうという判断なのでしょう。現実的ですね。スーパーの袋は何度も使えるようなしっかりしたものが1枚25セント(約13円)なので、それを繰り返し使います。この袋には丈夫な取っ手もついている場合が多く、25セント(約13円)の価値は確かにありますね。日本のスーパー式のを使っている店は袋代はタダみたいです。この辺りがお金にうるさいオランダ人らしいところでしょうか。決して環境に協力して25セント出してるわけではない・・・

恭子:日本では、すごい早さでビニール袋に入れますよね。私は断ることが多いのですが、その間も与えない程すばやく入れてしまいますね。このビニール袋が夢の島などのゴミ集積場で土に帰らず目立つのよ。私はビニール袋は有料にした方がいいと思っています。

京子:そうですよね、無駄ですもの。こちらでは、例えばシャンプーやバス用品などはむき出しです。封もしてなくて、棚にあるのをふたを開けて香りを確かめたりしてから買うのです。箱入りの商品は箱から出して中身を確かめて買うし。きちんと包装されて売ってるのは少ないです。だからゴミも少ないですね。

恭子:ゴミの観点からはいいですけど、安全の面からは困りますね。でも日本のデパートの過剰包装は何とかなりませんかね。ギフト用ならともかく、自宅用のものは、ちょっとデパートで沢山買い物をすると家に帰ってから、ゴミ箱がすぐいっぱいになってしまいます。上等の箱や包装紙、袋、本当に無駄ですね。

京子:店員さんがお客に包むかどうか確認して、本当に必要ある人には包んで渡し、いらない人はそのまま渡すようにすれば、能率も上がるし、無駄も減って一石二鳥でしょう。そのくらいのことはすぐに実行できそうですが。ところで恭子さん、日本のゴミ事情はどうですか。

恭子:少しづつではありますが、ゴミに対する意識は年々高まってきていて、リサイクルのシステムも徐々に改善しているように思います。今年の4月1日から「家電リサイクル法」が施行され、家庭からゴミとして出るテレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコンは有料で回収されて分解され、部品や材料は資源としてリサイクルされるようになりました。

京子:なるほど、捨てるのにお金がかかるとなれば、少しでも長く使おうという人も増えるでしょうね。

恭子:それが案外逆なんですね。景気が悪い影響もあって、販売店が回収無料キャンペーンをして売上げ増につなげようとしてるのです。それと最近は、修理費用が高くて、その一方機能が大幅に向上していて、省エネによる年間の電気代節約などを考えると買い直した方が得な場合が多いのです。だから「家電リサイクル法」の期待される利点は使える部品や材料は再利用して不燃ゴミを減らそうということだと思います。

京子:お金がかかるはずのところを無料だとなると、確かに買い換えが逆に進んでしまうかも知れませんねえ。そうやって部品の再利用が進めば不燃ゴミも随分減るでしょう。
燃えるゴミに対する取り組みはどうなっていますか?

恭子:私が住んでいる世田谷区の事例(砧586号より 平成13年12月発行)を紹介すると、世田谷区の6割の可燃ゴミが千歳清掃工場に集められ焼却されています。トラックで運ばれたごみは選別無しに直接焼却炉へ運ばれ800度の高熱で焼かれ、排ガスと灰に分けられます。煙突からは煙も臭いも出ていません。工場の半分以上のスペースをとっているのが排ガスの処理設備で、この工場の排ガス中のダイオキシンは法基準値を大幅に下まわっています。焼却時に出る余熱は隣接する温水プールに供給され、また東京電力に売電(年間4万キロワット約3億円)されたりしています。ほとんどの作業がコンピューター化されています。

京子:すごいですね。こういう話を聞くと、日本のレベルは世界最高なのではないかと思います。ガラス瓶などはどうなっていますか。

恭子:世田谷区のリサイクル施設に回収された硝子びんはリターナルびん(ビールびん等、業者へ有料で売られる)と、ワンウェイびん(破砕して道路、建築材やタイルなどに利用)と、リサイクルできないもの(化粧びんなど)に選別されます。ここでは大勢の人が働いています。選別作業というのは手間のかかる作業なのですね。

産業廃棄物の問題やら不燃ゴミがゴミ処理場に毎日積まれていくのを見ていると、土に帰らないゴミの深刻さに胸が苦しくなる思いですが、今回ゴミ問題を取り上げるにあたって、インターネットをサーチしていて放射性廃棄物の問題を見つけた時は、比較にならない程その深刻な問題にぞっとしてしまいました。

京子:それはどのような問題ですか。

恭子:放射性廃棄物とは文字通り放射性の廃棄物。放射能が恐ろしいのは、目に見えず、レベルが高く、しかも何十年にもわたって持続するからです。再処理工程で生じる核分裂生成物が高レベル放射性廃棄物といわれています。そして、将来原子力発電を止めても、高レベル放射性廃棄物はもうすでに存在しています。この高レベル放射性廃棄物がどのくらい恐ろしいものか、「原発のゴミはどこにいくのか」 (創史社 西尾漠編)という本によると:できたての高レベル放射性廃棄物のガラス固化体1本には、セシウム137という放射能で比べて、広島原爆で放出された量の100倍の放射能がふくまれています。放射能の強さもとほうもないものになり、すぐそばに1分間立っていると浴びる放射線被爆の量は、およそ200シーベルト(シーベルトは被爆線量の単位)。それがどれくらいの被爆かというと、2000年版の『原子力安全白書』には「15シーベルト以上で神経系の損傷による死、100シーベルト以上で急性中枢性ショック死」と書かれています。つまり、長くても30秒間そばに立っているだけで、確実に命を落とすことになるのです。100万キロワット級の原発を1年間動かすと、このガラス固化体にして30本分ほどの高レベル廃棄物がでてきます。

最近静岡県の浜岡原発の事故で、原発の老朽化の問題が提起されましたが、もし老朽化した原発が廃止されることになると、一基解体するだけで50万トンもの放射性廃棄物が続々と発生する(「原発のゴミはどこにいくのか」より)ことになるらしいです。

原子力委員会では、高レベル放射性廃棄物の処分方法は、ガラス固化体を地下数百メーターより深い地層中あるいは岩体中に隔離する地層処分を基本方針としています。そして、現在、地下深部の岩石や地下水についての調査や研究、技術開発が行われています。処分費用の積算や資金確保など処分事業についても検討されています。将来にわたって人間や環境に影響が出ないように地層処分についての研究・検討が行われているわけですが、それでも長い年月の間には人工バリア材の腐食がすすんだり、予想に反して大きな地殻変動があったりして、高レベル放射性廃棄物が地下水と接触する可能性は完全に否定できないと思います。

京子:それは不安な状況です。真剣に対策を講じないとならないでしょうね。

恭子:世界の主要国が皆原子力発電をしているわけですから、この問題は日本に限りません。だからもっと恐ろしいのです。私は、太陽エネルギー利用等、もっと安全な発電方法叉はエネルギー源を真剣に検討・研究するべきだと思います。

京子:賛成です。長い目で見て、人類にとって何が大切か、しっかり見極める必要がありそうですね。(了)

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