by 恭子(東京在住主婦) & 京子(オランダ在住主婦)
地球のあちらとこちらで、今どきの話題に花が咲く
〜日本の経済問題解決のための8つの提案〜 part2

【銀行の不良債権問題】

恭子:問題を解決する時には、必ず、問題が発生した原因を究明しなければなりません。不良債権問題が何故発生し、解決が長引いているのか考えてみました。

日本の銀行は有担保主義です。つまり担保余力があれば貸すし、無ければ貸さない。それともうひとつ、日本の金融慣行として、長期性の資金需要も短期資金でまかなっていることがあげられます。つまり、銀行が1年未満の融資をして、返済期日がくると、また1年貸付期間をのばす。これを繰返すのです。だからバブル後不動産価格が大幅に下落し続けたことによって多量の不良債権が発生したのです。これから先、こういう問題が起こらないようにするためには銀行の融資条件を根本的に見直す必要があります。

銀行が融資する時に先ず考えなければならないのは、借り手の企業が返済できるかどうかでなければなりません。事業のキャッシュフローから返済できればいいのです。それを判断するのが審査です。担保はあくまでも二次的なものだと思います。不動産の下落で企業の担保余力が無いから貸せないというのでは、あまりにも考えがなさすぎます。それで私が強く提案したいのは、銀行も借り手の企業もキャッシュフローベースでものを考えることです。キャッシュフローを計算する際には当然将来の売上げなり利益なりは仮定ベースになります。もし、キャッシュフローに不安があれば、次にはコベナント(covenant)を考えたらいいと思います。コベナントとは一口に言うならば、融資する際の契約条件です。例えば、シングルAの格付けを維持することとか、利益がある水準以下だったら配当を制限するとか、指定した資産(不動産とか有価証券)をどこにも担保に入れてはいけないとか、いろいろ借り手に応じて考えられると思います。アメリカの銀行では一般的に行われています。リスクをカバーするのに不動産担保の価値とか保証とかだけしか考えられないとしたら、一流の銀行と呼べるでしょうか?銀行はリスクを取り、マネージするのが本来の仕事だということを忘れてはいけないと思います。特に景気の牽引役となる産業が見当たらない今、新しい技術や商品を生み出す能力を持ったベンチャーキャピタルを育てていくことがとても大切だと思うのです。

提案2:銀行協会が中心になって、銀行員と企業の財務担当者にキャッシュフローの計算の仕方を徹底的にトレーニングする。

これがうまくいけば銀行の貸出しが増え、日銀の金融緩和政策の効果がでてきます。日本の企業に血液が流れ出し元気がでてきます。勿論、企業の情報開示の制度がしっかりと整備されることが前提ですけれども。

現在ある不良債権を減らすために第一手段としては、まず、借入先を返済不能の企業と再建可能な企業に分ける必要があり、この際、判断基準になるのはやはりキャッシュフローだと思います。企業のサイズとか、一部上場企業であるとか、そういうことではないと思います。テレビを見ていると、中小企業の経営者が、銀行は再建案には一切耳を貸そうとしないというのを聞きます。再建できる企業までつぶしていたのでは、不良債権は増える一方です。日銀がゼロ金利政策を続けているのだから、約定金利や返済計画をキャッシュフローに応じて見直せば優良債権になるものもあるのではと思うのです。デット・エクイティ スワップ(銀行が融資している貸付金を持ち分権に移す。不良資産引き当てから生ずる損失を被る代わりに、企業収益が回復した時に不良資産から収益を還付される権利を獲得する手法)などの日本にはまだ馴染みのうすい手法ももっと積極的に取り入れるべきでしょう。こういうアプローチは不良債権の温存とか、問題先延ばしということとは全然違います。一方、多額の債権放棄をしてもなお返済不能な企業は思いきって切り捨てるべきでしょう。現在整理回収機構(RCC)を受け皿として、不良債権を銀行から切り離す計画があるようですが、一日も早く実現することを期待します。

【デフレの問題】

今の不景気はデフレが問題だと言われています。でも私達主婦は一般の消費者物価はちっとも安いと思いません。食料品や交通費は高値安定です。安くなったのは不動産と株価です。いわゆる資産デフレです。そしてこれが銀行の不良資産問題とも深く関係があるのです。将来、小子化のため、人工構成の逆ピラミッド現象が予想されます。老人が充分な年金を期待できない時代がやってくるのは確実でしょう。この問題を解決するのに新しい不動産税制を提案したいと思います。

提案3:自宅用の不動産を売却した時、売却後2年以内に売却額よりももっと高い物件を買った場合、キャピタルゲインに対して売却の都度税金をかけない。ある一定の年令(例えば55歳)に達した時に、一生に一度だけに限り無税でキャピタルゲインを実現することが出来る。売却損については、売却益と相殺することができる。この税制をオプションで選択できるようにする。アメリカにこれに似た税制があり、老後の資金対策として利用されています。

京子:今までの不動産神話では、不動産は価値が下がらない、どんどん上がるから、買い換えで利益を生もうという発想があったと思います。もし、今も人々がそう考えているなら、住み替えが行われるには不動産の値段がどんどん上がっていかなければなりませんよね。それって、やっぱりおかしいと思うのです。

恭子:必ずしもそう単純ではないですよ。不動産は下がったといっても、人生で最も大きな投資です。普通なら2%位づつ物価が上がるわけですから、不動産価格も毎年少しづつ上がるのが普通です。これに税制が加わり、家を借りるよりも買う方が得になる場合もあります。不動産の値段が大幅に下がった今でも、20年以上前に家を買った人は売れば利益を得られる人が沢山いると思うのです。自分が住んでいる家を売る場合は税金が少なくなる制度は今でもありますが、売却益を100%手許に残せる税制はありません。個人にとって大きな金額の投資だからこそもっと機動的に活用できる制度があればそれにこしたことはないでしょ。選択の自由が増えるわけです。もっと住宅の住み替えが頻繁になれば、経済波及効果も大きいし、不動産市場も活性化され、尚かつ、老後の資金対策になれば、一石三鳥だと思うのですが。

【日本の財政赤字の問題】

最初に話したように、日本の財政赤字は膨大で、GNPの1.34倍にもなります。これを1企業の借金に例えるならば、500兆円の売上げの会社が、670兆円の借金をし、更に保証等の債務を加えると、連結債務が1000兆円に達し、返済不能で倒産しない方が不思議という状態です。景気が一向に上向かないので、赤字国債は増える一方で、アメリカの格付け会社からは近い内に再引き下げが通告されています。引き下げられると、日本の国債は主要7ヵ国の中でイタリアと並び最低の格付けになるのよ。

私が知ってる限りでは、国の予算は一般会計と特別会計があって、この二つの会計には重複している部分もあります。今年度の一般会計予算は82兆7千億円で、特別会計の歳出規模は373兆円でした。財政赤字を減らそうと思えば、この二つの予算を見直さなければなりませんが、特別会計制度はとても複雑でわかりにくいのよ。

特殊法人の廃止.民営化も小泉政権の大きな目標で、どうしてもやらなければならないことですが、国民はだまされやすい。例えば、いくつかの特殊法人が統合されても、人も費用も減らなければ全く意味がありません。そこで提案したいのです。

提案4:特別会計の問題も特殊法人の問題も、国民には数字で示していただきたい。 つまり、いくつ特殊法人が減ったかではなく、改革がすすんだことにより、いくら歳出を減らすことができたか、その結果、いくら財政赤字が減ったのかを公表していただきたい。そして、何時までにいくら減らす予定で、実際にいくら減ったかを毎月公表していただきたい。もし、計画通りすすまなかった場合は、その理由と対策をはっきり示していただきたい。必要ならば、民間で「特殊法人改革計画推進監視委員会」を作ってもよいと思います。

提案5:特殊法人の場合、赤字は税金から補填される仕組みです。赤字の場合、各法人の役員は責任をとって辞めるか報酬をカットするなどけじめをつけてもらいたい。民間企業ではあたりまえのことですから。

京子:民間企業で当たり前のことがなぜ出来ないのでしょうか。

恭子:誰も責任を取らない体質が定着しているからだと思います。当たり前のことがそうでないのが役人の世界なのです。これは政治の問題です。そして、やる気さえあれば実行できることです。

【採算のとれない有料道路の問題】

地方道路公社が管理している地方の有料道路の場合、料金徴収期間は延長できないため、償還期間終了後に残った債務は自治体が税金で肩代わりする。こういう道路が増えていて、地方財政を圧迫している。本州四国連絡橋公団の場合、借入金の支払利息が経常収益より多い。日本道路公団は2000年度の決算は20億円の利益がでたが、赤字道路もかかえている。根本的な対策が必要だが、その他にも次の案を提案したい。

提案6:有料道路の料金が高すぎて利用率が低いことも考えられるので、思いきって料金を見直したらどうでしょうか。各々の道路でいくつかの料金で実験し、一番利益が多くでる料金に設定する。

京子:当然ですよね。通行料の設定には市場の原理が働いてない。昔、首都高が出来た時とか東名高速が出来たときに、通行料は今は高いけどそのうちただになる、と聞かされ、それなら今は少々高いけど我慢しよう。そう思っていたのに、全くだまされたとしか言い様のない延々と値上げの連続ですものね。

恭子:でも、日本人は誰も文句を言わないでおとなしく払っている。払えない人は使わないだけのこと。だから利用率が下がるのでしょうね。

【個人金融資産の還流】

財政赤字を減らすためにも、株式市場を活性化して企業に活力を与えるためにも、個人が所有している金融資産を活用することが、景気を立て直すカギになると思います。株安による企業収益の悪化や消費の低迷、さらには企業年金の運用利回りの低下などの問題は深刻です。

不動産価格の下落も、株価低迷も、大きな要因のひとつは、企業が会計基準の変更に伴って不動産を売却したり、株式の持ち合い解消をしているからです。その一方で、バブル崩壊後、個人の資産運用は預貯金に偏り、株式の保有比率は4%位にまで低下してきています。だから、個人の資金が不動産やら株式に還流し、企業が売却する資産の受け皿になれば問題解消に役立ちます。銀行株式保有制限法によると、2004年9月中間決算から銀行の株式保有を制限することになり、大手銀行15行がそれまでに減らさなければならない保有株式は10兆円にのぼると予想されています。三菱東京FGは 2004年3月までに2兆5千億円の株式売却を予定しています。対応が遅れるともう一段の株価下落を覚悟しなければならなくなります。

提案7:日本経済が少なくとも本当の元気を取り戻すまでは、キャピタルゲインには一切課税しないこと。個人の金融資産保有高が多いのは、やはり50歳以上の世代だと思います。女性が多い事を考慮する必要もあります。だから、なるべく事務手続きはシンプルにすること。

最近、与党3党が証券税制改正案を発表し、11月の国会で成立する見込みです。この案が成立すると、2003年1月から源泉分離制度が廃止されて申告分離制度に1本化されます。つまり、株式投資をする人は皆確定申告をしなければならない。いろいろなインセンティブも盛り込まれていますが、専業主婦や扶養老親が株式投資をする場合、課税所得が38万円を超えると、世帯主は配偶者控除や扶養親族控除を受けられなくなるという問題も発生するのです。この改正案が個人金融資産の株式市場への還流に妨げにならなければよいと願うのみです。

【高齢者の問題】

現実的に将来のことを考えると、年金の金額も減り、受給開始年令もひき上げられ、医療費の個人負担も増える等、厳しい生活が予想されます。健康である限り70歳位までは働けます。仕事があるとわかってれば安心できます。

提案8:各企業に、資本金、売上げ高、収益などを基準に、55歳以上の人の雇用を法律で義務づけること。例えば、全従業員の5%は55歳以上でなければならないというように。オランダ方式のワークシェアリングを取り入れることも検討する。

京子:義務づけにはにわかに賛成かどうか言えませんが、年齢がいっていても、会社が払う給料が低くても良ければ、その人の経験が会社にもプラスになる職場ってたくさんあるのではないでしょうか。

恭子:実際にはなかなかそうは行かないようですよ。求人があっても、年令を聞いただけで、アウトだそうです。何でもアメリカの例をひくのは抵抗があるのですが、法律で義務づけたからこそ、女性の社会進出もすすみ、黒人などのいわゆるマイノリティの雇用も改善し、責任ある地位にもつけるようになったので、確実に効果は期待できます。現在の日本では、45歳以上の人の再就職は本当に難しいのですよ。オランダ方式のワークシェアリングは日本のパートタイムとはちょっと違いますから、高齢者の雇用でこの新しい雇用形態を取り入れるのはやってみる価値のあることだと思います。

京子:女性で言えば、昔から理由の分からない年齢制限がありましたよね。若けりゃいいってもんじゃないでしょうに。それと同じで、50歳以上でも元気なら、若い人より豊富な経験がものを言う場合って多々あると思います。それが生かされないのは大きな損失だと思います。年齢が行くと、それに見合うだけの報酬を払わなければならない(かも知れない)という暗黙の了解みたいなものが、採用する側を働き盛りの年齢層から遠ざけているのでしょうか。

恭子:それはあると思います。まだ日本は年功序列の給与体制をとっている企業が多いですから、年令が高いと支払い給与が高くなるんですね。終身雇用制度がくずれてきていますから、次は給与システムの変更ですね。このポジションはいくらというように完全な職能給に変えることでしょうね。あともうひとつ、辛い事ですが、日本の給与がバブル時代のままで高すぎるのかもしれませんね。コストが高いために競争力を失っているケースが増えていますから、下げる事も考えなければいけない時がきたのかもしれません。

恭子&京子:今や痛みに耐えることは仕方ないにしても、なるべく早くこれらの問題が解決されるといいですね。